相場の歪みと人間の習性を知って生き残る術

ランダムウォークで説明できない市場

「経済物理学」を掲げて、市場への物理学的なアプローチを試みている人の一人、ソニーコンピューターサイエンス研究所シニアリサーチャー高安秀樹氏は著書「経済物理学の発見」の中でドル円相場のティックチャートを解析に挑んでいます。金融工学の基礎となっているランダムウォーク理論では、過去の値動きとこれから起きる値動きは独立していますので、ティックごとの上下変動で期待される確率は2回に1回、つまり0.5(1/2)です。高安氏は一つ前のティックに対して新しいティックが高くなれば「+」、安くなれば「-」として、ティックチャートを+、-で分類して解析しました。

ランダムウォークの理論上、多少のゆらぎはあれ、常にどの場面からでも確率は0.5であり、ティックのサンプル数を多くすれば、「+」、「-」は同じ数だけ現れるはずですが、実際はそうなりませんでした。高安氏の解析によれば、「+」あるいは「-」が7回続くまでは、反対方向へ引き戻される確率が高くなるのですが、7回連続で続くと、今度は8回目以降も同じ符号が続く確率が0.5よりも大きくなるそうです。

ティックを時間にプロットしてみると、7ティック、つまり、取引が7回成立するのに、1分間程度。ということは、1分間、同一方向に値が触れ続ければ、「トレンド」が発生したとみなすことができる、というのが高安氏の見立てです。ただ、氏はドル円相場の分析で仮説を立てていますが、為替は個対個の相対取引が主体であり、業者が提供するティックチャートはあくまで「その業者内での取引結果」に過ぎないので、業者間でのデータのばらつきが大きく、そのまま実戦に適用することはできません。

ただ、以前お話した相転移現象における臨界点(>>関連記事 「相転移」から考える値動きの予測 )付近での不安定さから言えば、ティック解析によるトレンド発生警報は、スキャルピングでの取引が主体であれば、予兆として使うことは可能だと思います。実践的な使い方としては、1分足が見られるチャートツールで、ロウソク足を表示させて、ティックを数えつつ、

・陽線であれば上髭がない
・陰線であれば下髭がない

以上のような形が現れた場合、分足レベルでのトレンド発生警報とみなすことができるかもしれません。トレンドの寿命がどの程度かは、発生初期には見当がつかないので、流れに逆らわない取引が推奨されますが、1分足の値動きを予報代わりにして、5分足や15分足で取引する場合には、押し目買いや戻り売りの機会を探すきっかけに使うこともできると思います。

為替に限らず株や仮想通貨、オプションなどあらゆる金融商品のチャートではトレンドとレンジを大小さまざまな時間軸の中で繰り返していきますが、トレンドの流れに乗った順張りも、レンジと想定して高値安値で逆に仕掛ける逆張りも、結局は「この流れが続くだろう」「この辺で反転するだろう」という自分にとって、都合のよい思惑に依存している点ではどちらも変わりがありません。

逆張りは命取りでも、そもそものマインド次第

順張り、逆張りどちらが正しいということはないと思いますが、高安氏の解析が示すように、為替の価格推移には一定度の歪みがあることや、ブノワ・マンデルブロ氏が提唱したフラクタル理論により、価格がべき乗則で動くことが確認されている点などを考慮すれば、金融市場において、逆張りは一歩間違えると命取りになりかねない危険性が潜んでいる、ということは頭に入れておかなくてはいけません。臨界ぎりぎりで辛うじて均衡状態を保っている状態にあれば、ほんの小さな石ころ一つ転がっただけでも、大規模な土砂崩れを引き起こしかねないからです。

土砂崩れ

逆張り戦略を取る場合には、ごく短いスパンでマンデルブロ氏のいう「マイルド」、すなわち「レンジ」であれば、支持線、抵抗線のレベルから、逆張りを仕掛けても成功する確率は高いといえます。もちろん出口戦略を決めた上での資金投入は必須であり、あまり欲深く利を追うことはおすすめしません。そして、レンジ内での逆張りであっても、相転移現象にはやはり気をつけなくてはいけません。

ボラティリティが徐々に縮小し、ティックも少なくなり、かつ振れ幅が大きくなってきたのが観測された場合には、いったん相場から逃げる準備に取りかかるのが長生きのコツではないでしょうか。

プロスペクト理論と死生観

人はみな損失に脆いです。含み損があっても、損切りをして出直すより、ひたすら耐えて回復するのを待つ方を選択します。逆に1000円でも含み益があると、いち早く確定させてしまたい衝動に駆られます。損失しそうなリスクから目を背け、利益があればそれを失うリスクを回避しようとする、こうした行動習性は「プロスペクト理論」と呼ばれますが、私は、これは人間がいずれ死に至る存在であることと関係あるのではないかと推測しています。
死生観

人間はいつ死ぬか分からないので、損失はできるだけ先延ばししておけば、いずれ寿命がきて「損失を見ないで死ぬ」ことができます。また逆に、利益は早く確定させないと、「利益を手にしないまま死ぬ」ことになります。死ぬことを引き合いにだすのは極端かもしれませんが、プロスペクト理論は、人間の脳にそれに近い形である種のプログラムが組み込まれていることを示しているのではないかと思います。しかもおそらくは、人間が分かっていてもやめられないという「本能」に近い部分に、このプログラムは存在するのでしょうから、書き換えることは並大抵のことではできないでしょう。

となれば、プロスペクト理論の呪縛から逃れる方法としては、プログラムが作動するような「情報を入れない」ということが考えられます。ですから、チャートと何時間も向き合うとか、損益の推移をじっと見つめるといった行為はあまり推奨できません。チャートツールの中には、指定した価格に達するとアラートが鳴ったり、メールで知らせてくれるものがあります。それらを有効に活用して、過度に脳を刺激しないよう、相場と距離を保つことが大切なのかもしれません。

まずは脳を刺激しすぎないために、
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