「相転移」から考える値動きの予測

氷から水、水から水蒸気になる臨界点は重要ポイント

相転移というとやや聞き慣れない言葉ですが、温度・圧力・外磁力などの一定の外的条件下、物質の状態がある相から別の相へ移る現象を指します。小難しい物理用語なので、もっと簡単に言い換えます。わたしたちが普段接してる「水」は、温度によって、氷、水、水蒸気と姿を変えますね。これらはそれぞれ氷=固体、水=液体、水蒸気=気体、となるわけですが、この違いを「相(Phase)」と呼びます。相転移とは、氷から水、水から水蒸気と、この相が変わることを指します。

また、磁石では、温度を上げていくと、突然、磁性を失う「キュリー点」というのがあります。鉄だと、だいたい770℃がそれに当たるのですが、それまでは物質の分子が一定方向に揃っていて、磁性を保っているのですが、キュリー点に達した瞬間、分子がてんでんばらばらな方向を向いてしまい、磁性を失ってしまいます。

磁石

この相転移が起きる点のことを「臨界点」といい、この臨界点を超えると、いわゆる「臨界」となります。相転移が起きる臨界点付近では、物質の状態は、沸騰する水と水蒸気の境目のように、ぐらぐらと極めて不安定になります。さて、この相転移現象、何かに似ていませんか?そうです。市場の値動きも実はこれと近い動きをすることが観測されています。

「禁断の市場 フラクタルでみるリスクとリターン」を著した仏の数学者で経済学者のブノワ・マンデルブロ氏は、金融市場について、金融工学の基礎であるランダム性が支配する「マイルド」状態とべき乗則で荒っぽい動きをする「ワイルド」状態、そしてその中間にある「スロー」状態のいずれかに分類できると主張しています。そして「マイルド」、「スロー」、「ワイルド」はそれぞれ「固体」、「液体」、「気体」に特性が似ており、別の状態に移る時は物理学上の「相転移」に近い動きをすると分析しています。

マンデルブロ氏はフラクタル理論体系によって数学や経済学のみならず、統計物理学、気象学、地形学、分類学、神経学、情報技術にも影響を与えた巨人といわれ、所得の分布と綿花価格の変位分布、乱流状態の流体エネルギー散逸量と金融市場におけるボラティリティの変動などを比較して類似性を発見しています。この類似性の発見から、自然現象と経済現象はフラクタルの観点でみれば同じものであると主張し、フラクタル理論体系を金融市場に適用することによって、従来の経済学や金融工学が得意とするランダムウォーク理論では絶対予想できない「バブル経済の発生と崩壊」が説明できると訴えています。

実際の市場の値動きで当てはめてみよう

「マイルド」状態は、値動きがゆっくりとして、ボラティリティも小さく、チャートは緩慢なジグザグを描きます。市場参加者も少ないか、様子見が多く、いわゆる「レンジ」相場が続いている状態です。ドル円(USD/JPY)でいえば、ウェリントンから東京、香港ぐらいまでのアジア時間が近いかもしれませんね。

「スロー」状態は、ボラティリティが大きくなり始め、ティックごとの動きも上下にぴょこぴょこ振れ始めます。大きな市場がオープンしたり、経済指標の発表が近づいたりとざわついた状況になってきます。まさに東京市場を終えたあたりから、欧州初動にかけての動きに類似しており、レンジをブレイクしようと、支持線、抵抗線に挑む動きが出始め、ダマシも増えてきます。

「ワイルド」状態に至ると、ボラティリティは極限まで拡大し、確率や統計がまるで通用しない世界に突入します。「トレンド」が発生しているかのようにも見えますが、瞬時に切り返すなど乱高下を繰り返し、支持線や抵抗線も軽々と突破されてしまいます。ドル円でいえばロンドンからNYにかけてよく見られる動きともいえそうです。

チャンスであると同時に、リスクも飛躍的に高めてしまう相転移現象ですが、臨界を引き起こしやすい環境に注意を払うことで、ある程度リスクを低減させることができます。嵐が来るかもしれないと分かれば、いち早く避難することが、肝心ですよね。

熱量
さて、単純に物質の規模が小さければ、熱や圧力といった外からの力を受けやすくなります。鉄が磁性を失うキュリー点は約770℃とお話しましたが、鉄の質量が1000キロと1キロでは、770℃まで上昇させるために必要な熱量は段違いに違ってくるのはご理解いただけると思います。つまり「市場の流動性が落ち、値動きが小さい」ときは当然ながら、市場規模は収縮しています。このような時は相転移を発生しやすく、値が飛びやすくなります。逆に流動性が高まり、ボラティリティが膨らんでくると相転移の発生が近い可能性があり、ワイルド状態へ位相する可能性が高まってくるという警告とみることもできます。

マザーマーケットと呼ばれる通貨発行国市場が祝日などによる休場の際は、金融機関などの実需筋が非常に鈍くなりますので、相手国側の思惑にそった、一方的な動きになる可能性が高まります。ドル円相場であれば、米国市場と東京市場が平常通りの取引を行っているかどうかぐらいはカレンダーでチェックする習慣を持ったほうがいいでしょう。

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