金融商品の値動きは本当にランダムウォークなの?

ランダムウォークってそもそもなんでみんなに知られているの?

金融工学が考える値動きは、過去の価格変動とは一切無関係で実に気まぐれで適当に動いている「ランダムウォーク」であると仮定されています。ランダムウォークは、酔っ払いの千鳥足になぞらえて「酔歩」とも呼ばれます。

確かに酔っ払いがA地点からB地点まで一定の時間をかけて歩いた(移動)としたところで、AとB両地点に関連性はありません。泥酔したサラリーマンが自分の家とは無関係な駅のホームで発見されてもまったく驚かないように、酔歩で歩けば歩くほど「なぞの地点」に向かってしまうわけですから、ランダムウォーク理論に基づけば金融商品は保有している時間が長ければ長いほど価格変動リスクが増大する点は納得ができます。

実は、オプションの理論価格を求める超有名な方程式「ブラックショールズモデル」を筆頭に、金融工学における数理モデルの大半はランダムウォークの考え方に基づいて設計されています。なぜランダムウォークが金融工学に採用されているかという点をみれば、単純にいえば定式化しやすいからでしょう。学校で習った物理の実験で「摩擦は考えないものとする」「空気抵抗はゼロとする」とった諸条件がついたのと同じように、金融商品の数理モデルを組み上げる際、ランダムウォークで考えた方が正規分布の確立理論も適用でき、方程式を組み立てやすいメリットがあります。

金融工学と同じように経済学もまた合理性に基づく仮説で各種理論が設定されています。経済学では、市場に参加する「人間」は合理的かつ効率的でたとえ1人が間違った動きを取っても多くの人間は合理的に動いているので、市場としての効率性は損なわれない、と仮定されています。でも、実際の市場は時に金融工学者や経済学者の予測を大きく裏切って大暴れするのが現実ですよね。大物ヘッジ・ファンドの代表格ジョージ・ソロス氏は「市場は感情で動き、常に間違っている」と主張して、金融工学、経済学だけでは市場予測に限界があることを指摘しています。

新しい経済視点「経済物理学」の見解

こうした金融工学などの限界に対して、「経済物理学」を掲げて、市場への物理学的なアプローチを試みている人たちもいます。ソニーコンピューターサイエンス研究所シニアリサーチャー高安秀樹氏は、その著書「経済物理学の発見」(光文社新書)の中で「市場にはカオスの仕組みが内在しており、すべてをランダムウォークで説明することはできない」と指摘しています。

カオス

ここで高安氏が使う「カオス」というのは、初期段階のごく小さな差異が、やがて拡大されて、最終的にまったく違った結果を生み出す、というものです。カオスというのは複雑系とも関わりがあり、とても奥が深い分野ですので、ここですべてを語り尽くすことはできませんが、「北京で蝶々が羽ばたくとニューヨークで嵐になる」とかいうアレですね。このカオスに着目した高安氏はドル円(USD/JPY)のティックチャートを綿密に分析し、上がる下がるの確率が、ある条件下では1/2ではない、という法則性も導き出しました。金融工学などの実験室の理論では導き出せない「歪み」です。この歪みから、市場は正規分布で説明がつかない「荒っぽい値動きが高頻度で起きる」ことへ警鐘を鳴らしています。

古典的経済学や金融工学などが得意とする学説は仮定に次ぐ仮定や度重なる修正、異常値の排除などを経て静的な均衡状態の分析を得意としてきました。でも、この慣れ親しんできた従来の学説は、前提条件が「本当かな?」と思える部分が多く、確率論や統計論を重視するあまりに、直線でないものを強引に直線に見立てて無理に説明をつけようとする傾向がみてとれます。もちろん学者たちも実務上では理論が有効ではない場面があることは認識しています。高安氏のほかにも物理学や量子力学といった自然科学からの市場へのアプローチが近年試みられるようになってきており、ブノワ・マンデルブロ氏のフラクタル理論もその一例といっていいかもしれません。

すべて予測できる理論はない

どっちを選ぶ
古典的な経済学者たちは、物理や自然科学という門外漢の殴り込みを非常に疎ましく思っている傾向もありますが、こと一投資家レベルにおいてリスク管理という点でみれば、暴騰や暴落を「起こりえないこと」としか言えない従来の静的な学説よりは、「暴騰、暴落は市場の自然な振る舞い」としている動的アプローチの方が、より安全な資産運用をしていく上では現実的な気がします。

異常値を異常と切り捨てず、当然な帰結として受け入れて、無理をせず、度量深く、全体を俯瞰してとらえていくのが、この新しいアプローチのユニークさでもあり、醍醐味でもあります。ただ、残念ながら、新しいアプローチであっても市場の値動きを完全に読み切るほど精度が高くないのは事実です。語弊はありますが、「市場には回帰性があって異常値があっても均衡を取り戻す動きをみせていくはずだ」というのが従来の学説に近いですが、動的アプローチでは「均衡状態がいったん崩れれば、どこまで破壊が進むか予測できない」というスタンスです。ですから、これらの理論を学んだところで即大儲けできるわけではありません。あくまで、リスクを過小評価せず、値動きの意味合いを知る助けとなる程度であることを頭に入れておく必要があります。

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