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コロナショックが日経平均に与えた影響

2008年秋に世界を襲ったリーマンショック。それから12年後の2020年、新型コロナウィルスの影響でありとあらゆるリスク資産が売却されて株価は30%を超える暴落が相次いでいます。日経平均も、2020年3月19日の終値で16552.83円となっています。

5年間の日経平均の推移を見ると暴落の大きさが見て取れます。2019年度末の暴落から着実に株価が上昇し24000円台に突入していたところから一気に急落しています。

日経平均の5年間の推移

新型コロナウィルスについて、医学的な観点からは極端に恐れる必要がない。というのが私の見解です。若い方、持病のない方であれば、インフルエンザや風邪とさほど変わりません。

問題は、感染力や高齢者の死亡率の高さゆえの「経済的な影響の不確実性」です。

  • 東京オリンピックは開催されるのか?延期なのか?中止なのか?
  • 観光客はいつ頃になれば戻ってくるのか?
  • 航空機はいつ頃になれば再開するのか?
  • マスクやトイレットペーパーはいつになれば安定供給されるのか?
  • 円高はどこまで進むのか?

このような問いに対して大きな振れ幅が生じます。

事実として、倒産の危機に陥る企業も増えています。観光客向けの貸し切りバスや航空機、大規模イベントの運営事業者などは稼働が完全に止まってしまい、リストラ・解雇をやむなくされています。シルク・ドゥ・ソレイユがスタッフの95%を解雇したというニュースはとても象徴的です。世界的なエンターテイメント事業者がわずか数か月で窮地に追いやられてしまったのです。

とはいえ、新型コロナウィルスの影響をあまり受けない事業も少なくありません。リモートワークでも全く問題なく事業運営できている会社も意外と多いことに気づくきっかけになっています。しかし、人の心理はリスクを過大に認識して行動してしまうので、株価の大暴落が起こっています。

100年に1度の危機はなぜ12年後に再来したのか?

日経平均を25年間の変化を見ると、改めて今回の新型コロナウィルスによる下落幅が大きいことが認識できます。同時に、リーマンショック級が100年に1度では済んでいないという事実に気づかされます。

日経平均の25年間の推移

100年に1度の危機「リーマンショック」

時を12年前に戻します。12年前とは、100年に1度の危機と呼ばれる「リーマンショック」が起こった年です。

リーマンショックでは、アメリカ発の中低所得者向け住宅ローン(サブプライム)問題に端を発して、信用不安の連鎖が瞬く間に地球を覆いました。市場は大暴落し、その痛手からの復興に尽力していますが、リーマンに端を発する金融緩和策からの脱却が現在でもなお完全実現していないとう現状はみなさんもよくご存じかと思います。

破綻したリーマンブラザーズの負債は、当時の総額で約64兆円です。ゼロを並べるとこんな感じです。

64,000,000,000,000円

巨大すぎて一体どのぐらいの規模なのか、額が大きすぎてピンときませんよね。直接の比較にはならないのですが、日本の国家予算が約100兆円です。日本の国家予算の3分の2にも及びます。

このリーマンショックに対しては、歴史的には「100年に1度の経済危機」と言われますが、これを最初、言い出したのは、FRB(米連邦準備制度理事会)で当時議長だったグリーンスパンです。おそらく、彼は、1929年に起きた「世界恐慌」を念頭に置いて、100年に1度と発言したのでしょう。

グリーンスパンという米経済いや世界経済上の超重要人物の言葉であり、また、事態の深刻さを表現するのに適当なためか、メディアは、こぞってこのフレーズを使いました。

しかし経済学にとっては「世界恐慌から100年経っても、結局、危機を回避ないし予見できなかった」という皮肉でもあります。経済学といえば、理論や数式がいっぱい出てきて、さも難しそうな学問のイメージですが、世の中の実際を説明することができていません。どうしてなのでしょうか?

リーマンショック以外の大事件

リーマンショック後、メディアや各国政府要人、金融、経済の学者たちは「欲にまみれた人間が招いた結果」と解説しました。そんなことは100年前どころか、人類が誕生以来、ずっと言われてきたことです。何をいまさらという感じですよね。

しかも「100年に1度」と言われますが、投資家の資産をごっそりと目減りさせる「事件」「メガクライシス」は、世界恐慌以降、10年に1回以上は起きてます。ざっくり列挙してみます。

  • 1929年 世界恐慌
  • 1939年 第二次世界大戦
  • 1950年 朝鮮戦争
  • 1970年 オイルショック
  • 1971年 ニクソンショック
  • 1987年 ブラックマンデー
  • 1990年 日本バブル崩壊
  • 1997年 アジア通貨危機
  • 1998年  ロシア危機
  • 1998年 大手ヘッジファンドのLTCM破綻
  • 2001年 米エネルギー大手のエンロン破綻
  • 2008年 リーマンショック
  • 2020年 コロナショック

主だったものを並べただけですが、これらの出来事で大打撃を受けた投資家は多いと思います。こうした暴騰・暴落が起きるたびに経済学者は「合理性を欠いた強欲な人間が悪い」と糾弾してきました。

しかし、実際のところ、人類はまだこのメカニズムを十分には説明できないのです。経済学や金融工学の基礎となっているのは、あくまでも合理性に基づく静的な市場で、動的な金融市場のすべての動きをオンタイムで説明するのには限界があるのです。

ただひとついえるのは、事実よりも大げさな暴落で始まり、やがて現実に合った形に収束していくということです。

人間はそもそも合理的ではない。

経済学や金融工学に登場する「人間」は非常に合理的で効率的です。すべてを期待値で思考し、計算ずくでより確率が高く、正確な行動しかしません。

例えばこちらの2つの選択肢があったとします。

  • A:「今1万円もらえる」
  • B:「1年後に3万円もらえる」

この選択だと、合理的経済学人間は間違いなくBを選択するのです。

しかしこれは現実社会でも起きることでしょうか?みなさんには下記のような経験はありませんか。

合理合理的な経済学人間と非合理な現実社会の人間

近所のガソリンスタンドが1ℓ120円。郊外のセルフガソリンスタンドに行ったら1ℓ117円で満タンの半分の25ℓを給油した。安く給油できてラッキー。

ごく普通の消費行動と思えるでしょうか?私自身も含め、よくありそうな話だと思います。安いガソリンスタンドには行列ができてる時もありますね。

しかし、経済学に登場する「人間」はこう考えます。

  • 1ℓ当たりの価格差は3円だから、25ℓの給油では浮くのは75円。
  • 郊外まで出かけていくのに燃料消費するので仮に往復5㎞走ったとし、燃費が1ℓ10㎞とすると、0.5ℓ分58.5円は差し引く必要がある。
  • その時、浮くお金は16.5円。
  • 安い店は行列ができるリスクが高く、順番待ちのアイドリングの燃料消費も考慮すれば、差し引きはほとんど皆無に近くなる。
  • この場合、むしろ行列リスクと時間ロスを考え近所のガソリンスタンドで給油する方が効率的である。

おそらく、ここまで瞬時に考えて給油する人は、なかなかいないのではないでしょうか。しかし経済学での理論上の「人間」にとってはこれが普通です。現実にそぐわない「人間」の仮定が前提にあり、経済学の理論は「現実」に則していない側面もある点に注意する必要があります。

ガソリンスタンド

市場は非合理な人間の「心理」が動かす

ジョージ・ソロスは市場を動かすのは「心理」だといっています。そして常に「市場は間違っている」ともいっています。

経済学者が合理的な仮定を基に行動原理を人間に当てはめてきたところで、リーマンショックどころか、各種金融危機を予測できず、無策だったのはそもそもの立ち位置が違うからかもしれません。経済学は経済学として大変重要な学問ではありますが、市場で生き残るのはまた別の尺度が必要なのでしょう。

先日、ドル円相場は一時100円に迫り、その後すぐに111円にまで戻りました。これが現実社会で起こていることなのです。

今回のコロナショックは、リーマンショックと比較して取りうる金融政策の余剰が少なく、政策の効果が見込めないといわれています。いつまで長期化するのか間違っても、トイレットペーパーを買いに走ったり、マスクの転売を助長する恥ずかしい行為はしないように。正しい感染症対策と、冷静な判断を心がけましょう。

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