リーマンショックから早10年 経済学の進歩と限界

リーマンショックから経済学は何を学んだのか

2008年秋に世界を襲ったリーマンショック。もう10年も前の出来事なんですね。アメリカ発の中低所得者向け住宅ローン(サブプライム)問題に端を発して、信用不安の連鎖は瞬く間に地球を覆いました。市場は大暴落し、その痛手からの復興は、リーマンに端を発する金融緩和策からの脱却が現在でも完全実現していないとう現状は、みなさんもよくご存じかと思います。

さて、破綻したリーマンブラザーズの負債は、当時の総額で約64兆円。ゼロを並べると、
64,000,000,000,000円、こんな感じです。巨大すぎて一体どのぐらいの規模なのか、額が大きすぎてピンときませんよね。直接の比較にはならないのですが、日本の国家予算が2018年度予算で約97兆円ですから、日本の1年分のおよそ3分の2といえばなんとなく規模が伝わりますでしょうか。(とはいっても、想像はつきづらいですよね)

このリーマンショックに対しては、歴史的には「100年に1度の経済危機」と言われますが、これを最初、言い出したのは、FRB(米連邦準備制度理事会)で当時議長だったグリーンスパンです。おそらく、彼は、1929年に起きた「世界恐慌」を念頭に置いて、100年に1度と発言したのでしょう。グリーンスパンという米経済いや世界経済上の超重要人物の言葉であり、また、事態の深刻さを表現するのに適当なためか、メディアは、こぞってこのフレーズを使いました。でも、これって経済学にとっては「世界恐慌から100年経っても、結局、危機を回避ないし予見できなかった」という皮肉でもあります。経済学といえば、理論や数式がいっぱい出てきて、さも難しそうな学問のイメージですが、世の中の実際を説明することができていません。どうしてなのでしょうか?

リーマンショック以外の事件、忘れていませんか?

心ある人間
リーマンショック後、メディアや各国政府要人、金融、経済の学者たちは「欲にまみれた人間が招いた結果」と解説しましたが、そんなことは100年前どころか、人類が誕生以来、ずっと言われてきたことです。「何をいまさら」という感じですよね。

しかも「100年に1度」と言われますが、投資家の資産をごっそりと目減りさせる「事件」「メガクライシス」は、世界恐慌以降、10年に1回以上は起きてます。ざっくり列挙してみますと、

1929年 世界恐慌
1939年 第二次世界大戦
1950年 朝鮮戦争
1970年 オイルショック
1971年 ニクソンショック
1987年 ブラックマンデー
1990年 日本バブル崩壊
1997年 アジア通貨危機
1998年  ロシア危機
1998年 大手ヘッジファンドのLTCM破綻
2001年 米エネルギー大手のエンロン破綻
2008年 リーマンショック

本当に主だったものを思いつくままに並べただけですが、これらの出来事で大打撃をくらった投資家は多いと思います。こうした暴騰・暴落が起きるたびに学者さんたちは「合理性を欠いた強欲な人間が悪い」と糾弾してきた訳ですが、実際のところ、人類はまだ、このメカニズムを十分には説明できないのです。経済学や金融工学の基礎となっているのは、あくまでも合理性に基づく静的な市場で、動的な金融市場のすべての動きをオンタイムで説明するのには限界があるのです。

人ってそもそも合理的なの?

経済学や金融工学に登場する「人間」は非常に合理的で効率的です。すべてを期待値で思考し、計算ずくでより確率が高く、正確な行動しかしません。たとえば

A:「今1万円もらえる」
B:「1年後に3万円もらえる」

という選択だと、「合理的経済学人間は間違いなくBを選択する」のです。本当でしょうか?みなさんには下記のような経験はありませんか。

ガソリンスタンド
「ごく近所のガソリンスタンドが1ℓ120円なので、郊外のセルフガソリンスタンドに行って、117円で満タンの半分25ℓ給油した。いやー儲けた」

私自身も含め十分にありえる話です。安いガソリンスタンドには行列ができてる時もありますね。さて、ここで経済学に登場する「人間」はこう考えます。

「1ℓ当たりの価格差は3円だから、25ℓの給油では浮くのは75円。しかし、郊外まで出かけていくのに燃料消費するので仮に往復5㎞走ったとし、燃費が1ℓ10㎞とすると、0.5ℓ分58.5円は差し引く必要がある。その時、浮くお金は16.5円。安い店は行列ができるリスクが高く、順番待ちのアイドリングの燃料消費も考慮すれば、差し引きはほとんど皆無に近くなる。この場合、むしろ行列リスクと時間ロスを考え近所の方が効率的」

おそらく、ここまで瞬時に考えて給油する人は、なかなかいないのではないでしょうか。ですが、理論上の「人間」は生命活動に関わる万事がこの調子です。現実にそぐわない「人間」の仮定、経済学の理論は土台から「現実」に則していないのです。

ジョージ・ソロスは市場を動かすのは「心理」だといっています。そして常に「市場は間違っている」とも。経済学者が合理的な仮定を基に行動原理を人間に当てはめてきたところで、リーマンショックどころか、各種金融危機を予測できず、無策だったのはそもそもの立ち位置が違うからかもしれませんね。経済学は経済学として大変重要な学問ではありますが、市場で生き残るのはまた別の尺度が必要なのでしょう。

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